転げ落ちた先に (プラチナ文庫)
会社員上司・渥美卓也(あつみさくや)×会社員部下・鈴木義彦(すずきよしひこ)

《感想》

BL小説新人さんの作品と知らずに購入しました。別の作家さんと勘違いしてたんです。そうじゃないと気付いたのは、読み終わって後書きを読んでから。勘違いして買ってよかったぁ、と思える面白い作品でした。なんだか得した気分です(笑)。

鈴木の言動はオレ様だけどそれは育ちのせいで、性格そのものはオレ様じゃありません。自分がやる前に相手が先に行動したり、必要だからやるように言っているだけ。やらなくても相手を非難したりしません。おまけに元は母譲りの美貌とあって、周囲に人が勝手に集まってきたんです。

けれど胃を腫瘍で半分切除してから、状況は一変。長期入院と激変した容貌に、会社も取り巻きも去っていきました。そのために自分をマイナス評価するクセが付いたようですが、与えられた仕事はきっちり仕上げるあたり、基本的に真面目といえそう。

そんな鈴木の新上司として着任したのが、大学時代の後輩・渥美です。大学時代から密かに鈴木に惹かれつつ、自分など気に留めない鈴木を吹っ切ろうと別会社に就職&専務の娘と結婚。けれど妻の浮気で退職&離婚となり、鈴木を追ってきました。

再会してからの渥美の公私におけるなにげない尽くしっぷりは、ひょうひょうとした鈴木の心にもじわじわと沁みていきます。どちらかが一方的に上とか下じゃなくて、言いたい事は遠慮せず、できない部分をフォローするような対等の関係はいいですねぇ。鈴木にはこんな相手は初めてだったんじゃないかな。

my評価を★4としましたが、限りなく5に近い4。渥美が鈴木に惹かれる理由がもう少しだけ詳しく書かれていたら、文句無く★5だったんですよ。惹かれたきっかけや、逆に離れたときの心情とか。本編が鈴木の一人称だから、渥美の心情をカバーする部分がほしかったんです。あと、本編で騒ぎ立てた渥美の元妻のその後も何となく気になるし。

って思っていたら、作者さんのサイトには複数の本作番外編やリンク作、他の小説がたくさん掲載されていました。知りたかった元妻のその後は不明ですが、鈴木の実家事情や渥美のセクハラオヤジ擬態など、本編その後についても読み応えはたっぷり。興味のある方は見てくださいね。
 ・真名あきらさんメンズラブ小説ブログ 「酒場のたわごと 別館」
 ・本作番外編等一覧 ↑小説ブログ内 「転げ落ちた先に」

 あらすじ(PCはマウスを乗せると表示)全裸で、抱かれた痕跡を残す身体―酔い潰れて目覚めた翌朝、鈴木は愕然とした。かつては美貌と才能で女王様扱いされていた。けれど身体を壊して、すっかり面変わり。身の回りにも無頓着に過ごす自分に、今更欲情する男などいないはずだった。その部屋の主・渥美は新任の上司で、有能な男前。なんで俺!?と真意が分からずにいたが、以来、強引ながらも甲斐甲斐しく構われて…。
(Amazon「内容紹介」より)

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