奇跡が降る夜、ぼくを愛して (ビーボーイノベルズ)
指揮者・橘惣一(たちばなそういち)×孤児・飯塚千雪(いいづかちゆき)
《感想》
時々、無性に甘いBLが読みたくなります。同じようにエロいのが読みたい波もあるんですが(笑)、今はべた甘な気分。ということで、積読山から本作を発掘してきました。そうそう、こういうのが読みたかったのよ〜。
一言でまとめるなら「シンデレラBL」といった感じでしょうか。早くに身内を亡くした千雪は、引き取られた亡父の知り合いに、ろくに食べ物もあたえられずこき使われるだけでなく、才能の産物=作った曲まで奪われています。でも千雪はまったく気づいてなくて。それどころか自分を引き取ってくれた恩人だと思って、一生懸命主人に仕えてるんです。
両親ともに音楽家だったから、世間の荒波には縁遠い環境だったんでしょうね。1人になったのも中学入って早々だから、いろんな知識がつく前に隔離されてしまったという感じ。主人も名声があるもんだから、周囲をだませてます。もっともその名声は千雪のおかげなんですけど。
そんな千雪が出会ったのが、若手有名指揮者の橘でした。千雪本人の素直さやその才能に触れたことで、橘は主人の不正に気付きます。そして千雪を救い出すために動き、ひと騒動のあとに千雪は正当な権利を奪還。その後二人は…なんといったん離れることに。
橘がアラブの王様や世界的大富豪なスーパー攻め様だったなら、「ずっと俺のそばに」なんて言って終わりだったんでしょう。でも橘は実力のある指揮者とはいえ、基本は常識ある一般人。大人の分別を発動して、千雪の心身が年相応に成長することを優先させます。
この行動で、私の中で橘はぐぐっと株を上げました。健気なシンデレラには、本当の意味で包容力のある大人が似合いますね〜(笑)。この包容力は、後半、千雪が音大生になってからの話でも発揮されます。そしてそんな大人の魅力は、ちゃんと千雪にも伝わってて。もちろん甘いハッピーエンドです。
受け攻め、どちらのキャラも私好みな相性抜群のお話でした。イラストの雰囲気もピッタリ、読後もすっきりで、いうことなし。「こういうのがが読みたい!」って欲求に見事にハマったBL小説は、久しぶりですね〜。続編も手元にあるので、さっそく読まなきゃ。