何も言えない僕と懐中時計と恋の魔法 (SHYノベルス321)
時計屋店主・ソール=アンヴィル×会社員・吉野千晴(よしのちはる)
《感想》
「二重人格BL」というほどはっきり別人格があるわけじゃなく、感情が高ぶると軽くキレる気質を秘めてる受けが主人公のお話です。この微妙な感じが、そのまま私の読後感に表れました。
基本的に千晴目線で、合間にソールとその使い魔鴉・オニキスの会話が入ります。使い魔がいるということは、実はソールは現代の魔法使い。といっても占い師と催眠術師を足して割ったような感じで、使い魔と会話する以外はファンタジーな魔法を使ったりしません。
二人はそれぞれ事情を抱えていて、詳細を伏せた状態で話が進みます。最初に惹かれたのは、千晴のほう。その視線の意味を勘違いしたソールにキツイことを言われたりもします。でもお互いの事情が徐々に明らかになるにつれ、二人の距離はぐぐっと接近。千晴への想いを自覚したソールが動いて、千晴の問題は解決しました。
適度にヤマ場があり、ソールのそっけなさが情熱に変わるのは私好みな展開です。これで千晴がもうちょっと動いてくれたら、より好み度はアップしたんですけどね〜。家族を人質に取られてるようなものだから、仕方ないのはよく解るんですが。キレっぷりがもっと突き抜けてる…と別の話になりそうだしダメですね(笑)。
千晴がキレる原因は変態大叔父のせいで、問題が解決した後はもう大丈夫なのかと思ったら。言葉にできない感情が溜まったら、出てくるようです。今までは嫌悪感が溜まったものだったのが、これからは嬉しいとかヤリたいとか(笑)前向きな感情だから、ソールには楽しんでもらえるかも。