ラクダ使いと王子の夜 (ビーボーイコミックスDX)
貿易商次男・アルファルド×キャラバンの少年・カマル 表題カップルほか
※短編集です。一部シリーズ作あり。
《感想》
「くどい食材もソフトなパンの間にはさんだらみんな食べてくれるんじゃないか」と作者さん後書きにありました。ソフトなパンはその通りだけど、くどい食材なんて可愛いもんじゃないような…。この二つを組み合わせた編集さんは、最強の勇者に違いありません(笑)。
まずはソフトなパンの感想から。冒頭は、それぞれ鬱屈を心に抱えた本当は寂しがりな高校生達の話。簡単に告白するくせに相手が自分を好きなると別れる捻くれた攻めが、想いをひた隠しに隠してついにあふれさせた受けの情熱に自分の本気を目覚めさせられます。ラストはにっこり幸せな笑顔がいいですねぇ。
次の表題作は、冒頭カラーで始まります。砂漠で倒れていたアルファルドを助けたことをきっかけに、カマルは外の世界を初めて知ります。けれど逆に自分の生きる世界は元の村と思ったカマルは村に戻りますが、隊長がキャラバンの解散を考えていることを知り…という話。アルファルドとの恋もありますが、どちらかといえば少年が巣立つ成長物語かな。
このちょっぴり切ないながらもほんわかした空気が、次の「くどい食材」3作で一気に激変。なんとも重くて暗くて狂気にあふれたシリーズです。登場する2組は、弟×兄、父×息子、というどちらも身内。しかもかなり歪んだ執着をもっています。一方的にどちらかが相手を支配しているというよりは共依存で、不幸なのか幸せなのか白黒はっきりつけられません。
読者の好みがはっきり分かれるシリーズなのは、間違いなし。私は…このシリーズだけで丸々1冊だったらきっと買わなかったはず。読後がものすご〜く引きずるのは苦手なんです。そういう意味では、編集さんの策にまんまとしてやられたってことかな。
ラストの描き下ろしは、表題作その後。隠されていた親心が切ないけれど、前向きな爽やかさもあります。重い気分のお口直しにはページが足りませんが、ちょっとぐらいは気分が浮上できるんじゃないかと。はぁ〜、しんどかった…。
という感じで、とにかく両極端な作品が収められた1冊です。綺麗な絵って、切なさだけじゃなくて重さも倍増させる効果があることを実感しました。次回作もこんな感じになるんでしょうか。気になるなぁ。
リブレ出版 2014-03-10