ニィーニの森 (Feelコミックス オンブルー)
領主の息子・オーウェン=W=コバトール×ウサギ族・タドタ ほか
※シリーズ短編集です。長編あり。
《感想》
最近BLで、ネコ耳トラ耳いろんなケモ耳がブームまっただ中。本作もそんなケモ耳の一冊…と一言でくくってしまうには、もったいない作品です。この不思議感がたまんないわぁ。
図鑑を思わせる表紙に描かれた人や不思議な動植物そして道具は、すべて本文中に登場。絵の周りには小さく文字のようなものが書かれています。これ、絵師さんがオリジナルで作った文字or実在するけどあまり知られていない文字化だと思ってました。
でもよ〜く見てみると、実はローマ字。例えば、表紙の謎のピンクウサギの上は「ichirinusagi=一輪ウサギ」、右は「mori no junin ni tegami wo todokete kureru=森の住人に手紙を届けてくれる」といった感じ。読めた文字を参考にするとほかの文章もすべて読めて、ちょっとした暗号解読気分を味わえました。
もしかしてカバー下にも絵があるかも、とめくったら、なんとそこにはアルファベット対応表が!これ使えば、もっと簡単に読めたんですねぇ。でも楽しめたから、気付かなくて良かったのかも。カバー外すと見やすいですよ。
で、肝心の中身はというと。なんとも可愛らしくて深くて哀しくて切なくて力強い作品でした。今年になってからに読んだコミックスの中では、一番印象的な作品と断言できます。私の好みは偏ってるので誰にでもおすすめ…とはいきませんが(笑)。読み返すごとに惹きこまれ、飽きるなんて言葉とは今のところまったく無縁。お宝本入りは確定です。
ベースとなる舞台は、どこかにあるニィーニの森。赤身の肉を食べると呪いがかかるため、人間を含めたいろんな種類の生き物が仲良く暮らしています。妖精が住む湖もあり、満月の夜にはなんでも願いを叶えてくれるという言い伝えもある不思議な森です。そんな森で暮らしたり、暮らそうとニィーニの森を目指す生き物たちの物語がぎゅ〜っと詰まっています。
メインの登場人物たちが、みんな優しいんですよ。妖精に願いを叶えてほしいのも、自分がどうこうというよりは誰かを助けたいから。そんな願いだから妖精も聞き届けてくれるんでしょうね。でもその力は絶対じゃないから、哀しい別れもあるんです。
1話目は可愛らしい感じでスタートし、2話目では切なさと深い愛情が、3話目長編の前の描き下ろしで2話目の気分をちょっと落ち着けて、3話目では異種族対立と因果応報の哀しみ、そしてあきらめない前向きな力強さが溢れています。もっと具体的に感想を書こうとも思ったんですが、私があ〜だこ〜だ書くよりもこの話は読んでもらうのが一番かと。
SHOOWAさんのブログに「これで一応完結」とあるので、現時点では続きはなさそう。でも管理人のニィの話や病院の先生など、登場人物はまだたくさん残っています。描き下ろしの人間たちのその後も気になるし、今すぐじゃくていいからぜひ続編を!!
祥伝社 2014-01-25