しなやかに愛を誓え (幻冬舎ルチル文庫)
警備会社外部スタッフ・佐光匡英(さこうまさひで)×小塚利翔(こづかりしょう)

《感想》

やんちゃな野良猫受けと、余裕のある大人な攻め。BL設定では割とよく見かける定番のカップリングです。定番だからこそありきたりな展開になってしまいがちですが、本作は勢いに乗って最後まで一気に読めました。恋愛と利翔の精神的な成長、この2つにポイントが絞られてたからかも。

親に恵まれず中卒後すぐに施設を飛び出した利翔は、適当な相手の家を転々とその日暮らしで生きてきました。ある日チンピラに絡まれたところを、佐光に助けられます。佐光は「二年前にも会ったことがある」と利翔を自宅に招き、クズにならずに生きる方法を教えると言ってきて…。

利翔は「理不尽な運命に負けたくない」と思いながらも、具体的な手段が解らずにあがいています。佐光と出会って、バカにされず認められたのも、必要とされたのも初めてで。自分をちゃんと見てくれる佐光だから、惹かれたんです。辛い生き方をしてきたわりにはスレてなくて、無自覚に佐光を煽ったりして大変なことにもなってますが、まだ若いから大丈夫でしょう(笑)。

自分の力が伴わないのに先走っちゃったのも、単に見栄を張ったというよりは本気で相手を助けてあげたいと思ったから。残念ながら結果は哀しい方向に進んじゃいます。利翔はこの一度の失敗から自分がどうすべきかを正しく学び考え、佐光の指示に従いました。冒頭のやけくそ君から考えると、ものすごい変化ですねぇ。時々見かける学習しないおバカ受けさんとは、大違い。

佐光は利翔に聞かれたことは基本的に隠さず向き合うので、彼が何をどう考えてるかが比較的解りやすくなってます。できる大人攻めってはぐらかして危険から遠ざけようとすることが多いから、ちょっと珍しいタイプ。利翔を庇護する相手じゃなくて、汚れ仕事も一緒にできる将来のパートナーとして扱ってるところはgoodです。

一見パーフェクトに見える佐光も、彼でもどうしようもないことが世の中にはあふれていて。そんな時に見かけた利翔の言動は、世の中に流されまいと尖がって不器用だけど優しさもあり、佐光の人生を変えるぐらいインパクトを与えていました。だから、利翔と一緒にいるうちに惹かれるのも当然かと。ラストで煽られて暴走するあたり、本音がむき出しな感じがワイルドで好きだわぁ。

ところでこの話、シリーズ化しやすい設定になってます。同僚のリンク作の構想はあるようですが、個人的には本作主人公の続編、できれば10年後ぐらいのたくましくなった利翔が読んでみたい…。SSでもいいので、ぜひぜひお願いします。

 あらすじ(PCはマウスを乗せると表示)「抗うことをあきらめて、弱いままで死んでいくのか?」―。街中でチンピラに絡まれた小塚利翔を助けた男・佐光は、元警察庁のエリートキャリア。怪我の手当てだと強引に家に連れ込まれた利翔だったが、懐かない猫のようにふるまってしまう。だが荒んだ暮らしの中で会ったこともない不思議な魅力を持つ佐光に、いつしか距離を縮めていき…。
(Amazon「内容」より)

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