美少年の事情 (リンクスロマンス)
貴族子息・サフィエルス=サラキス=サトゥール×会社員・佐賀太一郎（さがたいちろう）
《感想》
佐倉朱里さんは、私の中ではファンタジーの印象が強い作家さんです。元々多作な方ではないんですが、最近は年に1冊ペースで新作を発表されていて、ファンとしては嬉しいですね〜。
今回も、私の大好きなファンタジー。主人公が事故（子犬を助けて自分が川に流される）をきっかけに異世界にいく、という設定はBLでも珍しくはありません。ただ定番と違うのは、主人公が穏やかで気配りできる50歳の独身中年おっちゃんということ。
しかも異世界では、なぜか金髪キラキラの美青年（推定20歳前後）の姿になってしまって。でも中身は元のままなので、素敵な容姿＋分別のある大人な中身、というある意味最強の主人公が出来上がりました。
異世界に流れ着いた佐賀を助けたのは、サフィルことサフィエルスの家が治める荘園でした。サフィルと彼の友人2人の、合計4人が主な登場人物です。
助けられてしばらくの間、サフィルは無愛想でした。というのも、彼は長年の想い人に失恋して、信頼する兄を亡くし、急遽跡継ぎとなり父と葛藤が生じていたんです。そんなサフィルの気持ちを癒したのは、亀の甲より年の劫(笑）な自然体の佐賀でした。
その後、あれよあれよとサフィルの気持ちが佐賀に向くのは若さのなせるワザでしょう。そして佐賀も未体験の情熱をぶつけられて、サフィルを受け入れます。でも自分はいつかは元の世界に戻ると信じていたので、それまでの関係のつもりでしたが…。
という感じ。小さな事件を織り交ぜて世界観を読者に伝えつつ、少しずつ2人の関係が進んでいきます。佐賀のキャラが穏やかなせいか、文体もさらっと読みやすい感じ。やまがたさとみさんのほわっとして可愛いイラストもぴったり合っていて、気持ちよくラストまで一気に読めました。
主人公2人の関係はとりあえず落ち着きましたが、まだまだ山あり谷ありの予感が。例えばサフィルの元想い人が現れたらどうなるか、佐賀のサフィルに対する想いは恋愛なのか、などなど、続きを読みたいネタは一杯あります。
続きといえば、サフィルの友人2人については作者さんもネタがあるそうです。両想いだけどお互いに気付いてないし障害も多いので、前途は多難。できればあんまり重くなくて楽しい内容がいいな。
