たぶん疫病神 (二見書房 シャレード文庫)
会社員先輩・音無樹(おとなしいつき)×会社員後輩・佐藤琉生(さとうるい)
※リンク作あり。既刊感想はこちら→「なんか、淫魔に憑かれちゃったんですけど」「なんか、淫魔が見えちゃってるんですけど」「なんか、淫魔が恋しちゃったんですけど」
《感想》
ふと自分の書いた記事を読み返したら、トップのカップリングが”おとなしい×うるさい”に見えてきて、ちょっと笑っちゃいました。これは偶然?
作者さんとレーベル+タイトルに「神」ときたら、アレをすぐに思い浮かべるべきでした。絵師さんが違うから、油断してたんですよね〜。アレ、とはそう「淫魔シリーズ」。今回も神は神でも「疫病神」だから、周りの人間・特に主人公が大変な目に遭うのは決定で。どんな災厄が降りかかるのか、楽しみにしながら(笑)読み始めました。
話は「淫魔シリーズ」3巻目の、マッドサイエンティストとも噂される篠澤室長が作った勃起不全薬騒動と少しだけリンク。本作はその騒動の少し前、佐藤がトイレの個室で不審な三つ揃えスーツの男性とご対面するシーンで始まります。
実はこの男性、ちょっと前に歌でも流行った「厠神=トイレの神様」だったんです。場所に憑くイメージがありましたが本作では人に憑くそうで、しかもその憑いた相手の不幸をエネルギー源とする、ちょっと(いやかなり)迷惑な神様。
淫魔の場合は目的のために周囲に強烈な引き寄せフェロモンを撒き散らすようになりましたが、トイレ神は憑いた相手の周囲に災厄をもたらし、よりましが不幸になるようにしてしまう効力が。あの勃起不全薬騒動のきっけかも、実はこのせいだったんですね。
おかげで佐藤は、せっかく片想いしていた先輩の音無から告白されてもすんなり頷けません。なぜなら、関係が深いほど相手に大きな災厄をもたらしてしまうから。両想いなのにすれ違うとっても辛い状況に。
普通はこうなった原因の神様を恨むところですが、佐藤は多少の愚痴を言う程度で、神様に名前までつけてあげるお人よし。ちっとも”うるさい”キャラじゃありません。でもそのおかげで、神様も離れる方法を思い出したあと、大きな事件で泣く佐藤を見て「泣かせたくない」と離れてくれて、めでたく収まります。
後日談のSSもあり、無事に初合体を果たしています。その前にトイレ神と再会するんですが、竈(かまど)神という別の神様も登場。日本には八百万(やおろず)の神様たちがいらっしゃいますからねぇ。このシリーズ、今後もネタには困らないことを確信しました(笑)。
淫魔シリーズとはまた違った雰囲気の話だな〜、というのが読みながら思った事。憑いたモノの性格と能力の違いなのか、あちらの方がドタバタコミカル色が強いかな。どちらも、人間の都合なんて関係ない、というマイペース人外っぷりは今回も健在でした。
肝心のBLのL(ラブ)について、ほとんど書いてませんね。音無のキャラが”おとなし”くて薄いってわけじゃないんですが、佐藤と神様のやりとりのほうが印象強かったんですよ。あんなに想いを主張してアプローチして災厄受けつつ頑張った音無君、ごめんよ〜(笑)。