刑事と踊れ (アズ・ノベルズ)
刑事・鳥谷竜司(とりたにりゅうじ)×バレエダンサー・瀧川愁(たきがわしゅう)

《感想》

古くは「転校生(※原作:おれがあいつであいつがおれで)」でメジャーになってから、BLやラノベといったジャンルを問わずによく使われる"入れ替わり"設定。そんな定番がこの作品のテーマです。

普通は入れ替わった2人が主役ですが、今回は入れ替わらない瀧川が主人公。入れ替わるのは、瀧川の友人でやはりダンサーの君島と、昭和に生きて撃たれた刑事・鳥谷なんです。ちょっとひねりの効いた設定じゃないですか。

体の本来の持ち主である君島の出番は、冒頭のわずかだけ。2人で飲んで別れて、その直後に倒れていた君島を瀧川が見つけた時点で、すでに中身は鳥谷へと入れ替わり済みです。普通だったら大騒ぎして現実逃避しそうな状態なのに、他人の瀧川はともかく入れ替わった鳥谷自身も随分と冷静に受け止めるのね〜と思ったら。鳥谷はギリギリののところで踏ん張ってただけでした。

自分の実家に行き、両親の死去と今の自分よりも年上になった弟と対面して、その踏ん張りも崩れてしまいます。自分の居場所という大切なもの失ったわけですから、それも当然でしょう。そんな鳥谷の心に寄り添ったのが、瀧川で。2人の気持ちが一気に近づきます。

鳥谷の気持ちが一段落した後半は、瀧川の身辺に話の中心がうつります。巻き込まれたトラブルと冒頭で君島が倒れていた件の両方を、鳥谷が本職のノウハウを生かして一件落着。2人の関係も恋人へと進化してハッピーエンド。鳥谷は元に戻らず、君島に入ったままで終わります。

ということは、一人とっても可哀想な人が。そう、冒頭で消えてしまった君島です。その後の消息は一切書かれていないんですよ…。長年の友人で大切なバレエ仲間であるはずの瀧川があまりにも心配しなさすぎて、違和感を感じるくらい。

昭和時代の鳥谷は撃たれて殉職してるから、そういうことなのかもしれませんが。それなら尚の事、もうちょっと哀しむとか心配するとかあってもよかったんじゃないかな。瀧川の恋愛の浮かれっぷりに思わずダメ出ししそうになりました(笑)。

ということで、主人公2人のアメリカ編も読みたいけど、個人的には君島を救済してあげてほしいですねぇ。ちょっとイジケ気質ではあったけど、決して悪人じゃないんですから。

 あらすじ(PCはマウスを乗せると表示)俺、瀧川と親友の君島は幼い頃から共に踊り続けてきた、ダンサー仲間でありライバルだ。所属するバレエ団の公演を控えたある晩、もう踊れないと言って帰っていった君島。後を追った俺が発見したのはマンション前に倒れる彼の姿だった…。すぐに意識を取り戻した君島だが、なんと彼の魂は昭和の時代から来た刑事、鳥谷と入れ替わってしまっていた。繊細な君島とは正反対な鳥谷と同居することになった俺だが…。
(Amazon「内容」より)

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