フォルモサの夜 (ガッシュ文庫)
私立探偵・三島宗造(みしましゅうぞう)×大学生・関谷俊明(せきやとしあき)
《感想》
初期の水原作品は受けが痛い目に遭うことが基本設定でしたが、最近は強い受けもちょいちょい見かけるようになりました。本作はそんな状況判断と行動ができる、私好みの受け・俊明が主人公です。
俊明は元々台湾人の両親を持ち台湾で育ちました。父が亡くなった後に母が日本人と再婚して日本に帰化した過去を持ちます。その時に苦労した経験からか、年齢以上のしたたかさを身に着けています。いわゆるクセ者タイプですね。
日本で平穏に暮らしつつ休みには台湾に戻る生活をしていた俊明が探偵の三島と知り合ったきっかけや、その後に三島に調査を依頼したのは、あらすじ通り。でも依頼の引き換えの手付金は、貞操じゃなくてキスでした。
俊明の性格からしておとなしく最後までやられることは考えられませんし、元刑事の三島もほぼ初対面に近い相手を強姦するほど非常識じゃありません。チョイ悪へたれオヤジってところでしょうか。
友人の件が思いがけず大きな組織につながり、その組織が三島と敵対していたことから2人は拉致されることに。ここで定番なら、三島がスーパーマン並に頑張るとか、元刑事の人脈を使ってなんとかするとか、とにかく三島の見せ所のはず。ところが本作で場を納めたのは、俊明が披露した京劇の剣舞でした。
その後、無事に生還してからの両想いエロの後も「朝目覚めた時にお前が横にいなかったらダメかも」とか、自分の仕事に俊明を巻き込もうとしたりと、予想外のへたれっぷり。もちろん俊明にだけ見せる弱い顔なんですけどね。そして俊明は三島に対して母性溢れかえってるので、いい組み合わせになりそうです。
ということで、重くなくテンポ良く読めました。暑いときには、こういう後味すっきり系がやっぱり合いますねぇ。