キスをどうぞ (ガッシュ文庫)
ホテルチェーン経営・桐原征司(きりはらせいじ)×モデル・藤井暁斗(ふじいあきと)
※シリーズ物です。既刊感想はこちら→「お手をどうぞ」
《感想》
シリーズ1冊目と相性が良かったので、2冊目も購入です。こちらも新書の文庫化だから、やっぱりボリュームは十分。2人は前作で恋人同士になってるので、今回は当て馬登場による嫉妬&すれ違いという王道を予想してました。実際は、当たらずとも遠からずかな。
メインは、暁斗の焦りと成長でした。桐原に見出されてわずか3ヶ月でホテルイメージモデルとして華々しくデビューした暁斗は、事務所に所属せず桐原が仕切っている状態で、予備知識も無いまま新しい仕事に突入。いくら良い原石とはいえ経験不足は否めす、また周囲のやっかみもあって精神的に追い込まれていきます。
暁斗の焦りの根っこは「自分は桐原にふさわしいか」という不安なんです。急激に環境が変化したからモデルの仕事を実力で取った実感が薄く、まだ自分に自信がもてないのも、当然で。だからなおさら仕事はきちんと取り組みたいだろうに、やり手のはずの桐原が、なんの説明も無く新しい現場に行かせた事にとても疑問を感じました。桐原の指示は受け入れるようにしたのも、元はといえば桐原だし。
結果的に暁斗はモデルとしての自覚と成長を得ることができましたが、桐原の暁斗に対する態度が中途半端になってしまったのは、残念。恋人だからこその甘さ、ともいえるんでしょうけど。もっと徹底的に甘やかすか、母トラのように崖から突き放すか、はっきりしてほしかったかな。
当て馬と悪役ライバルは、どちらも今回の仕事の共演仲間にいました。嫌がらせ手紙はともかく本番時に監禁だなんて、自分の仕事を大事にして無い証拠。もっと反省させてほしいところですが、事情がばれて逃亡で終わり、はちょっと肩透かしでした。確かに仕事は干されるだろうけど、こう、すかっと見返してやりたいじゃないですか(笑)。舞台の暁斗を絶賛した新聞批評とかがあったらよかったのに。
文庫用の書き下ろしは、桐原目線の本編後のとある一日。朝7時に始まり、夜二時に就寝するまでの出来事が、時系列で書かれています。一番の突っ込みどころは、暁斗のポスターとのツーショット撮影でしょう。わざわざ遠回りまでして写真を撮らされた秘書の心中は…(笑)。まさしく「恋は盲目」です。
ということで、今回は読みたい方向とほんの少しずれてたので、★は3つ。先入観無しで読んでたら、違ったかもしれません。読むときの気分でも簡単に左右されるし、また少し時間を空けて読み返そうかな。