華なるもの (Feelコミックス オンブルー)
貴族子息・智実(ともざね)×北面の武士・高前(たかさき)
※短編シリーズ集です。

《感想》

平安後期が舞台の時代物BLです。時代物は、アラブ、子持ちや花嫁などのテーマに比べると作品数は多くありませんが、最近目にすることが増えました。昔はテレビでも時代劇を多くやっていて、夕方の再放送枠はほとんど時代劇だった時期も。日本人には馴染みのあるジャンルだから、これからもっと増えるかもしれませんね。

特に日本では、近代になるまで「男色」というのは一つの文化。恋愛というより、コミュニケーションに近い感じでしょうか。だから出世のためだったり主従の間だったり、一般的に行われていたようです。

本作の主人公・高前は、出世欲の強い武士。自分の美しい容姿の使い方を良く知っていて、最初の主人を足がかりに上位の人間に食い込み、最後は院の伽の相手にまで上り詰めます。前半は、そんな高前と周囲の人間にスポットを当てて描かれています。

後半は、高前が初めて意識した相手・智実との話になります。まとまるかと思われた二人の仲は、高前が降りかかった火の粉を払う為に巡らせた策略が原因で、複数の人の命を失い心を傷つけ最悪な結果に。智実は本当に高前を好きだったからこそ、怒りや憎しみもより激しく、高前は流罪を黙って受け入れ…。

ここで終わりじゃありません。流されてからの話もきっちり収録されていて、読者には嬉しい仕様になっています。長い時がすぎ、周囲が和解へと流れ始めても、高前は動こうとしません。それは彼なりのプライドなのか謝罪なのか愛情の証なのか、読者によっていろんな捉え方ができそう。

ここまで読まれた方にはお解かりのように、ハッピーエンドBLじゃありません。陰謀や策略が繰り広げられる、どちらかといえば重い内容です。でも涼しげな綺麗な絵で淡々と進むせいか、陰惨な感じはまったくなく無くて。切なくじんわり沁みてくる、まさしく大人のBLといった作品といえます。

ラスト、死にゆく高前を迎えに来た幻のシルエットが誰か、最初は解りませんでした。智実とは髪型が違うし、最初の主や院でもなくて。しばらく悩んでもう一度よ〜く見て、一房垂らした前髪にあっと気付きました。高前自身じゃないですか。若い頃の自分が迎えに来たんですね。智実じゃないのが、なんとも高前らしいというか。最後まで自分を貫いた姿は、哀しいけれど見事でした。

 あらすじ(PCはマウスを乗せると表示)時は平安末期。武家の三男と卑しい出自でありながら、権力者たちの寝所を渡り歩き、上皇の寵人となった高前(たかさき)。美しい成り上がり者として畏怖と羨望の視線を集める高前だったが、有力貴族の御曹司・智実(ともざね)からは素直な好意を寄せられ、その余裕を不愉快に感じていた。しかし、二人の関係が決定的に変わる事件が起こり――。引けぬ意地と激情が絡み合う切なく底深い大人の恋愛劇、“数年後”を描く掌編を描き下ろし。
(電子貸本Renta!「内容紹介」より)

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