てのひらにひとつ (ディアプラス文庫)
大学事務・日下部拓道(くさかべたくみち)×塾講師バイト大学生・宮下和音(みやしたかずと)

《感想》

先日の「ライアテア」に引き続き、これも積読山で眠っていた一冊です。好みのツボにいい感じにスポッとはまりました。もっと早く読むべきだった〜。

受け攻め共に穏やかな性格かつ丁寧語で喋るので、ゆったりしたテンポで進みます。既に社会人として自立している日下部と、まだ若く学生の和音。勤務先と通学先が同じ大学ながら、2人が知り合ったのは和音のバイト先である大学受験用塾でした。

30才を超えて医師を目指す日下部に、両親や恋人そして塾の講師たちは冷ややかな対応をします。記憶力や体力も10代と比べると間違いなく落ちてるし、上手く合格できても医師になれるのは40歳かつ新人医師なんですから。周囲の反対なんて押し切る意思と覚悟がないと、単なる無謀な夢で終わってしまいます。

日下部は確固たる目標があったので、揺らぐことはありません。今なら年齢的にも、医師として40年ぐらいは働けるというのも大きかったんでしょう。でもやっぱり、孤独な戦いは辛くて。そんな時に出会ったのが和音でした。

こんな風に書くと主人公は日下部のようですが、1話目が和音目線で、2話目が日下部目線の中篇2作です。日下部の方が歳が近いせいか考え方とか共感する部分が多くて、思わず力が入っちゃいました(笑)。

もちろん和音もとってもいい子なんです。親友に惹かれる隠れゲイで、好きなピアノも演奏家としてはあきらめるなど、やっぱり心に孤独を抱えていました。2人は歳や立場は違うけど孤独を知っているから、他人を否定せず優しく接することができるんですねぇ。

後半の遠距離恋愛編では、年齢そして経験の差によるすれ違いもあります。だけど相手が好きな気持ちは少しも変わらないどころか、お互いに増すほど。将来を見据えた和音の覚悟と行動には、頭が下がります。

一生懸命にちょっぴり背伸びもしつつ真面目に生きる人が幸せになれる、こういう作品は読後が本当にすっきり。年齢をいい訳にしないで自分も負けずに頑張らなきゃ〜、って思える作品でした。

◆あらすじ(Amazonより)
経営学部生の和音は、塾講師のバイトをしている。そこへ社会人の日下部が、医学部受験のために入塾してきた。本来の志望進路もゲイである己の恋心も、すべてを諦めてきた和音。誕生日の夜、胸にしまい込んだその秘密を、和音は日下部に吐露する。現実的ではない夢のためにひとり戦う日下部は、ただ黙って話を聞いてくれた。そんな年上の男に、和音の心とからだはやがて惹かれてゆき…?優しい年の差ロマンス。

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