頬にしたたる恋の雨 (ディアプラス文庫)
寄席の主・瀬島頼秋(せしまよりあき)×落語家もずこと絹谷文彦(きぬやふみひこ)
《感想》
話がしっかりしていて読後もすっきりした作品を読みたいときは、久我さんに限りますね〜。ずば抜けた安定感があってしかもレベルが高いから、どれを読んでも間違いなし。今回も気持ちよく読了できました。
今までにも何度かテーマになっている漫才で、今回は時代を昭和初期に設定。まだまだ漫才が色物芸として低く見られていた時代の話です。口調が昔の大阪弁だそうで、今よりも柔らかいというか落ち着いた雰囲気が漂います。
久我作品の主人公って、大なり小なり挫折を経験してちょっといじけたりもしますが、基本はとっても素直で一途。こうと決めたら、目標に向かって進む努力は惜しみません。頑張ってればちゃんと見てくれている人がいる、目標は達成できなくても別の形で必ず花開く時がくる、って前向きな気持ちになれるんです。
嫌がらせをしてくる相手もいますが、そんな主人公をちゃんと見て支えてくれる人々もたくさんいて。本気で頑張ってる人の周りには、本気で応援して支えてくれる人が集まってくるんだねぇ。なんて、ちょっぴり我が身を振り返って反省しながら読みました。
ラブ面では、瀬島の文彦可愛がりっぷりがいいですね〜。文彦も両想いになってからは、まったく揺らぐことはありません。エロは久我作品の中では多目かな。恥らいつつも積極的な様子を堪能させていただきました、ごちそうさま。
ラストの短編は、第3者の記者目線にすることで、激動の戦中時代が語られています。さらっと簡単にまとめられているだけでも大変だった様子がよく伝わって。実際の芸人さんたちもこうだったんだろうなぁと思うと、高齢の芸人さんに対する意識が変わりました。皆さん長く頑張って欲しいな。
《13:30追記》
久我有加さんのブログで番外短編が読めます。2作収録された本編のあと、雅亭の高座に上がるようになってからの話で、団子目線です。よき理解者が相方でもずは本当に幸せもんですわぁ。