追いかけようか? (プラチナ文庫)
会社員・西条守(さいじょうまもる)×カフェ店員・立花尚太(たちばなしょうた)
《感想》
吹き出しの中に書かれたタイトルが話し言葉のような、一見では、BLかどうか解らない可愛い表紙になっています。プラチナ文庫といえば昔は肌色率がとっても高く、私も若かったこともあり(笑)、レジに持っていくのを躊躇したのも今となっては懐かしいですねぇ。
そんな健全な表紙同じく、内容もエロはラストの合意1回のみ。そこに至るまでの二人の気持ちの変化がしっかり書かれています。章ごとに目線が入れ替わるので、それぞれ何を考えていたか解りやすい仕様です。
西条はいきつけのカフェの無口で無愛想な店員が気になり、立花はかっこいい常連のサラリーマン客に惹かれていました。そう、お互いはじめから印象に残ってたんです。その気持ちを恋にまで昇華させたのは、立花が先でした。思い切って、というか弾みで告白したのはいいものの、ここで大きな間違いが。
後ろ向きな性格の立花にとっては、恋心に踏ん切りをつけて終わらせるつもりの告白だったんです。だから西条の返事は望まないし、その言動も理解できなくて振り回されることに。そう、私の苦手なはずの後ろ向き自己完結キャラなんです。なのに読んでいてあまり気にならなかったのは、西条の無神経にも思える言動のせいでしょう。
当初、西条は自分の言動に過剰反応する立花を面白かわいがっていて、ちょっと意地悪というか確信犯なところがありました。でも自業自得とはいえ、告白してきたのにまったく自分を見てくれない相手に、本当の意味で振り回されたのは西条で。最初はあまりお近づきになりたくないと思えた西条ですが、読み進むうちにだんだん気の毒に思えてきちゃいました。
そんな二人に共通するのは、言葉足らずと勝手な思い込みでしょうか。最後は西条の踏ん張りでなんとかまとまって。立花もいろんなことを学習してステップアップしました。二人して意思疎通の重要性を再認識してるので、今後はぐるぐる悩む思い込みのすれ違いは減りそうかな。
フランス書院 2012-04-10