その熱情に染められて (B-PRINCE文庫 み 4-3)
書道家・羽染成夜(はぞめせいや)×企業デザイナー・紺野瑞葉(こんのみずは)
《感想》
少し前の流行BLの香りがほのかに漂うなぁ、と思ったらやっぱり版元を変えての再販でした。初版は2004年9月だから、約6年前。予想よりは古くありませんが、ブームの移り変わりの速さを実感してしまいました。
友人同士のすれ違い物です。お互いに相手を想っているのに、ちょっとしたことが積もり積もってひた隠しにしています。それに仕事や瑞葉の先輩で元セフレ・両院が絡んで、ついに羽染が実力行使。そこで告白すればいいものを、つっぱったが為に体だけの関係が続くことに。けれど最後はちゃんと素直になって、ベタ甘カップルの誕生という、ある意味BL王道話です。
この本は、「本編」、学生時代の出来事を羽染、瑞葉、両院それぞれの視点でちょっとずつ書いた「短編」、そして目次に載っていないベタ甘「SS」が後書きの後に一本、収録されています。SSは編集作業後にその存在を思い出したそうで、タイトルもありません。でも書下ろしではないようです。
すれ違いからベタ甘ハッピーエンド、その前後をフォローする短編、とこれ1冊で十分堪能できる造りになっています。けっこうお腹一杯。唯一気になる点があるとすれば、両院のその後でしょうか。彼の本当の想い人とはどうなったのか、とても気になるところ。後書きからすると、続編は書き下ろしや同人番外編がメインのようなので、ちょっと期待です。