雨かもしれない 厄介な連中 1 (角川ルビー文庫)
ミステリー作家・遠野遼一郎(とおのりょういちろう)×イラストデザイナー・宮城篤史(みやぎあつし)
※シリーズ物です。

《感想》

前から気になってたシリーズです。読んで思わず「えぇ〜っ!」と叫んでしまった超びっくりなことが。もっと早く読むべきでした…。

もう絶版になっているので、古本屋で揃えてから一気読みしました。前半5冊は文庫、後半3冊はハードカバーになっています。今は電子化されているので、簡単に読めるようになりました。タイトルは順に、こんな感じ。
 「雨かもしれない」 「イミテーション・サマー」 「時計仕掛けのオリーブ」 「温泉神社で逢いましょう」 「イレギュラー・クリスマス」 「きまぐれなパンドラ」 「しあわせな憂鬱」 「にぎやかな遺産」

重度の自殺癖を持つ篤史は、10度目の自殺場所に選んだ廃屋に見えて実は住居で、持ち主である遼一郎と出会いました。マイナー猟奇小説家でサドの遼一郎に気に入られ(実は愛されている)、今では彼の小説の血まみれイラストを嫌々ながら描きつつ、体の関係込みで同居してます。

その遼一郎には、15年前にNYから連れ帰った息子・美雪がいて、篤史はなぜか懐かれ慕われて(キスどまり)、親子と不思議な三角関係に発展することに。他に、遼一郎の親友の医師、熱烈なファン、編集、篤史の元カレである刑事、といったレギュラー陣が登場します。

4巻目までは、主人公達がなにかと事件に巻き込まれ、遼一郎が安楽椅子探偵もどきに推理をして事件解決というパターンです。起きる事件はドタバタとしたもので、コメディタッチの軽い調子で話は進みます。巻頭カラーは裏にオチがあったり、4巻には遠野家の平面図があったりと、楽しみながら快調なペースでどんどん読み進めました。で、いよいよ問題の5巻へ到達。

4巻までと違い厚みもあるこの巻は、親友の伊藤が遼一郎を空港に追いかけてくるシーンで始まります。そう、話は15年前へ遡っていました。そして13P目、1行目に登場した人物の名前を見て、今日の冒頭のリアクションになるわけです。それは「ハリー・ローゼンランド」。

大好きな「ホーリー・アップル」シリーズの、あのハリーです!ハリーに「愛してる」と言わなかった日本人の恋人とは、もちろん遼一郎になるわけで。そこからは無我夢中で読みました。5巻は丸々NY編で、二人がどうやって出会い付き合うようになったか、なぜ遼一郎は美雪を自分の子として日本に連れて帰ったのかが、詳しく書かれています。ここまでのコメディタッチとは変わり真面目な展開に、ぐいぐい引き込まれました。先に知ってたら、「ホーリー・アップル」の読み方が違っていたはずです。

「ホーリー・アップル」シリーズは二人が別れた直後、「厄介な連中」シリーズは15年後と、時間差があります。なので、もしハリーが「厄介…」に出てるならその後のドイルとの関係もわかると思い、残り3冊のハードカバーも一気に読み進めました。残念ながら、郵便物やテディ・ベアの名前に気配を感じる程度で、本人は登場してません。でも今後の展開次第では…、と思わせる内容になってます。

そう、今後の展開次第なんですよねぇ。今回、タイトルを「全8巻」としなかったのは、まだ終わっていないと思ったから。篤史の自殺癖も、遼一郎との関係も、はっきり決着していません。美雪の母親と遼一郎の関係が明らかになりましたが、美雪は自分の出生の秘密を知らず、一番の山場はまだなんです。でも8巻目が出たのが2003年12月なので、既に7年近く続編が出ていないことに。「ホーリー・アップル」シリーズに合わせて再開ってことにならないもんでしょうか。

とまぁ、とても興奮しましたが、これって既に知っている人は知ってるネタなんですよね。ブログでも多くの方が書かれてますし。でも、予備知識無しでたまたま読んだ本が好きなシリーズに繋がっている、という興奮を味わえたので、これはこれで良かったかなぁ。

≪2018.06.02追記≫
15〜17話の同人誌が電子化されました!大人の事情に左右されない発表環境が整ったのは、イイことですね〜。
 →ACORN vol.3 厄介な連中15: 春霞たなびく墓地のメッセンジャー
 →ACORN vol.4 厄介な連中16: 昇るか降りるか東京タワー
 →ACORN vol.7 厄介な連中17: 嘘をつくなら墓場まで

◆あらすじ(Amazonより)
自殺志願の美青年・宮城篤史。異色な作風で知られる超マイナーミステリー作家・遠野遼一郎に時にはサディスティックにもてあそばれながらも、遼一郎の館に居候し続けていた。…そんなある日、遼一郎の友人・伊藤が殺人事件の参考人として警察に連行されてしまう。しかもそれは死体の存在しない殺人だった。篤史と遼一郎の「厄介な連中」が次々ぶつかる奇妙な事件。

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL漫画感想へ
にほんブログ村
応援ポチよろしくお願いします