恋情抄―昭和綺談 (もえぎ文庫)
編集・鹿嶋柾(かしままさき)×小説家・高村榛也(たかむらはるや)
《感想》
記事作成中にPCトラブルが発生!定時にアップできませんでした、残念…。トラブルは解決したので、明日からは大丈夫なはずです。
タイトルにある「奇譚」を辞書で調べると、世にも珍しくて面白い話、とありました。その通り、秋の夜長向けのしっとりした、かつちょっと不思議で優しいお話でした。
主人公達は、幼馴染の身分違いです。お互い想いを寄せながらも、体面を重んじる鹿嶋の母に交際を禁じられた高村は、冷たい態度をとり距離を置きます。けれど募る想いを自分だけの小説に書き綴っています。そんなある日、夢の中で鹿嶋と出会いしがらみから開放されたことから、どんどん夢の世界にのめりこんでいき…という内容です。
こういう話の場合、BLパターンでは親が亡くなった後に攻めが実力行使で受けを監禁して、というのが多いように思います。そういう強引タイプも悪くないのですが、今回のように一途に思い続けて最後は二人で一歩踏み出す、というのも好みだったりします。特に今回の攻め=鹿嶋は、募る想いを絵に込めてるなど芸術家気質もあり、ちょっと新鮮な感じが。しかも夢の世界がいいと現実逃避するのも鹿嶋、というのは予想外でした。
体面を重んじる母親は悪役になってますが、一概にそうとも思わせないエピソードも挿入されてます。近所の娘が、某有力者の愛人である高村の母と親しいことを理由に破談になる、というもので、今よりも世間体を重視する当時の常識が伝わってきます。個人よりも家がより優先される時代だったんですねぇ。
その後を書いた同時収録の短編では、二人の初々しくも情の深い暮らしぶりが書かれています。鹿嶋の異母兄にして高村の担当編集・唐沢にも新たな出会いがあったりして、ちょっと先が気になりますね。続きあるのかな?