交渉人は嵌められる (SHYノベルス)
交渉人は諦めない (SHYノベルス)
周防組若頭・兵頭寿悦(ひょうどうじゅえつ)×交渉人・芽吹章(めぶきあきら)
※シリーズ物です。前作感想はこちら→「交渉人は黙らない」「交渉人は疑わない」「交渉人は振り返る」
《感想》
とっくに読了してたんですが、感想を上手く纏められなくて先延ばししてました。延ばして文章が良くなるわけないので、そろそろ観念してみました(笑)。
シリーズ4冊目・5冊目はセットでの発売で、ボリュームたっぷり。ずーんと重い内容になっています。最初は軽快なやり取りとともに始まりますが、あるUSBメモリー(×2ヶ)を巡る事件をきっかけに芽吹の過去が暴かれ、どんどん四方を囲まれていくような圧迫感が増していきます。
そう、芽吹が信じられずに失ってしまったという親友との過去と経緯が、今回明らかに。彼は、死んだように生きていた芽吹を日の下に引っ張り出してくれたかけがえの無い相手でした。その彼が義父殺しを疑われた時、信じつつも不利な状況から助け出すことを優先して芽吹は「罪を認めろ」と返し、弱っていた彼は精神的な支えを失い結果、自殺してしまうんです。以後、どれだけ辛くても前を向いて愚かなほどに人を信じて生きることが、信じられなかった親友への芽吹の償い方になったわけで。
今回のUSBは、当時の事件の隠れた真相に近づく証拠が残されたものでした。ところが、USBはもう一つあり、こちらは周防組にとって必要なもなだったんです。この二つが入り乱れ、更に天才詐欺師で親友の事件の黒幕だった環の策略と悪意が、芽吹を襲います。環は人を信じず、芽吹とは正反対の生き方を選んでいます。でも、その空しさも本当はわかっていながら認められず、徹底的に芽吹を貶めることで自分の正当性を感じたかったんでしょうね。
そんなわけで、とにかく芽吹は大変です。これでもかっていうくらい、精神的にも肉体的にも痛めつけられてます。もちろん仲間はいますが、与えられたダメージをすべて消すことは無理。しかも、兵頭までUSB絡みで環側に行ってしまい、まさしく拠り所がありません。このままどうするの〜っとじりじりしながら読み進めると。
ちゃんとどんでん返しがありました。まさしくすかっと爽快。ここに来るまで辛いシーンが長かった…。兵頭とも直接コンタクトしなくても、ちゃんと通じる部分があることも確認できます。その兵頭、今回はいいところ無しでした。次はカッコいいところも見せてほしい〜。
表紙の縄のイラストが、「嵌められる」では固く結ばれているのが「諦めない」では解けています。これって、芽吹が死のうとした縄とか芽吹の囚われた心とか、いろんなものを象徴してるんだろうなぁ。カラーは黒が基調ということで、ほぼ予想どおり。季節も冬でした。予想では次が再びの春で終わると思ってたんですが、次は番外でその後も続くと、こちらは嬉しい予想ハズレでした。番外は、智紀のイメージで黄色なんてどうでしょう。
ところで、最近大阪府警の取調べについて話題になっていますが、あんなヤクザ顔負けな脅し文句と怒声連発の取調べを受けたら、普通じゃいられないのも当然ってかんじですね。いつ自分の身にふりかかってもおかしくないと思うと、めちゃくちゃ怖いです…。
大洋図書 2010-07-29
大洋図書 2010-07-29