溺れる人魚 (ディアプラス文庫)
鍼灸師・桂貴聖(かつらたかまさ)×大学生・羽角眞生(はずみまき)
《感想》
昨日に引き続き、溺れてます(笑)。普段書くことも目にすることも少ない漢字なので、妙に印象に残りました。「水に弱い」で溺れるなんて、漢字って奥が深いです。
遊び人×芯の通った純情青年という、あるといえばある組み合わせです。でも眞生が本当に男らしいというか、真っ直ぐな心を持っていて、とても読み応えのある硬派な内容だと感じました。
桂も仕事には真面目ということは、元々そういう性質を持っているはず。でも本気になれる相手に出会わなかった(出会おうとしなかった?)から、適当な恋愛を繰り返していたのかもしれません。そしてそのいい加減な恋愛のツケは、しっかり自分に返ってきます。
後半、桂のことを「信じられない。信じさせてくれ。」と叫ぶ眞生は、とても痛くて哀しかったです。それに対する桂の対応が、本当に眞生を信じさせるに十分だったかといえば、個人的にはちょっと疑問。信頼って壊れるのは一瞬で、得るには年月をかけて積み上げるしかないと思うので。本当に大切な相手に出会えた桂が変わると、信じたいです。
ところで、いつきさんの九州弁といえば「午前五時のシンデレラ 」がありますよね。今回、眞生が話す九州弁もとても合っていて、話の奥行きを深めていたと思います。方言作品って、もっとあってもいいと思うんですが、どうでしょう。