最も美しい嘘のこと (ミリオンコミックス Hertz Series 78)
美大生・黒須景一郎(くろす)×美大生・弓狩呼人(ゆかりよひと)
《感想》
金井さん、初挑戦です。先入観がまったく無い状態で読みました。さてさて〜。
予想外に複雑な内容でした。美大で見かけた絵に猛烈に惹かれていた黒須は、ある日偶然作者の弓狩と知り合います。能力の全てを絵に傾けているようないわゆる「天才タイプ」の弓狩の面倒を見るうち、黒須はどんどん本人に気持ちを持っていかれます。弓狩も、やはり連載画家である父の事を知っても変わらない黒須に興味を持ち、いつしか嫉妬までするように。
そんな時、弓狩の絵を狙った強盗が押し入り、黒須はこれを力でねじ伏せます。そのとき弓狩は怪我をした黒須の血の美しさに魅入られ、動けなかったことを悔やみ恐れます。でも黒須はそんな弓狩をそのまま受け入れるのでした。という話です。
これだけ読むとそんな難しくなさそうですが、それぞれの過去というか背景がちらちらと合間に入るんです。その内容が、曖昧というか全てを細かく説明せずに読み手に補わせるような表現になっていて、もう少しヒントが欲しかったですね〜。特に後半は唐突な感じがあり、描きたい事が溢れていて、1冊では纏め切れなかったような印象を受けました。
絵は線が太めで、スクリーントーンやベタで陰影をつけるというもの。ちょっとアニメのような感じがします。個人的には嫌いじゃないですよ。完成されていないけど今後どうなるか、絵にも内容にもパワーを感じる絵師さんでした。これからも追いかけようかなぁ。
大洋図書 2010-06-24