放水開始! ‾許可証をください !6 ‾ (二見シャレード文庫 う)
喜美津化学製造部・前原健一郎(まえはらけんいちろう)×品証部・阿久津弘(あくつひろし)
※シリーズ物です。既刊感想はこちら→「許可証6巻もうすぐ発売記念祭!〜どうしてそんなに好きなのかぁ〜

《感想》

待ちに待った「許可証シリーズ」最新刊。落ち着いて読みたかったので、発売から少し間が空いてしまいましたが、やっと読めました。先週のうちに5巻まで一気に読み直したおかげで、すんなりと話に入ることができました。そして、相変わらずよかった!

以下、長文かつネタばれ満載の感想になります。

毎回何らかの困難に直面する弘達ですが、今回はそれが3つも同時にやってきます。

◆その1:ISO文書作成の遅れ(主に製造部)
文書作成といった作業を苦手とする製造部の面々が、「気分転換」という名目で消火競技大会に向けての練習に熱中してもある程度容認しつつ、弘は自分が製造部の分を手伝うことで遅れをカバーしようとしていました。

◆その2:前原の母へのカミングアウト
罵られたわけではありませんが、自分の住居の1階は佐和子の飲み屋でもあり、たまに会っても言葉を交せず気まずい思いを抱えていました。

◆その3:喜美津の大手取引先、大東亜有機との取引終了の恐れ
弘は営業の徳永から、喜美津からの値上げ要求に対し大東亜有機が値下げを回答してきたこと、そして回答を受け入れなければ取引終了を宣言してきたことを聞きます。そもそもISO取得は喜美津からの強い要望により始まった話なので、取引終了となれば話自体立ち消えになる可能性が。全体の士気を下げない為にも、弘はこの話を胸に仕舞います。でも、無駄かも知れない作業を、体力・精神的無理を押して進めることにわだかまりは残っていました。

こんな日々が続き3つの重石に弱っていたある日、ぽろっと「しばらく部屋を出る」と言った弘に対し、前原は「数を減らしてやる」といって弘を工場に連れて行き、消化訓練に参加させます。 訳がわからないまま、何時しか無我夢中で練習を終えて帰ろうとした弘が見たのは、文書を作成する製造部の人々でした。

実は今まで工場内で作業しなかったのも、彼らなりに「タイトなスケジュールで作業を円滑に進めるには、弘に良い環境で文書作成してもらうのがベスト」と暗黙のうちに判断していたから。 本来なら他部署が自分達の仕事に手を出すことを嫌がる製造部ですから、弘を「信頼できる」と認めたということですよね。

その弘が鬼気迫る表情で気分転換の消化訓練をするのを見て、自分達が作業する番と判断したんです。こうして重石の数が一つ減りました。その後の弘と前原のやりとりは、ちょっと禅問答的な感じが。結局言いたいことは「お前は自由にやれ。バランスは俺が見る。」ってことなんでしょうね。

ここでまた男前度を上げた前原に対し、弘も一歩踏み出しました。自分が好きな人が前原であることを両親に知っておいてほしいから、と北海道にカムアウトしに行きます。

相手を前原母と勘違いして大騒ぎするあたりは相変わらず。帰りの車の中で、父が弘に自分達の過去を語ります。知恵の神様の話は、奥が深くてさすが法務教官(少年院の看守)らしいです。その後帰宅して、佐知子とも話ができ、弘は2つ目の重石も下ろせたのでした。

相変わらずボリューム満点の内容でしたが、あっという間に読み終わりました。既刊に比べると動きが少なく内面的な内容が多かったような。特に無駄になるかもしれない作業を進める空しさや、自分では気付かないギリギリでの不可解な行動など、個人的に「そうそう」って共感する部分が多々ありました。弘が弱っているせいか笑いのシーンはやや少なめですが、話そのものの面白さはいつもどおりです。

唯一残念だったのは、本編後半が書き下ろしだったためか、いつもある前原視点の書き下ろし短編が無かったこと。毎回楽しみにしていたので、ちょっと寂しい…。

最大の重石である取引終了とISO取得の結末は、次巻に持越しです。その次巻は、作者さんの後書き漫画によると、ついに最終巻とのこと。あ〜終わるのかぁ。早く読みたいような先延ばししたいような、なんだかちょっと複雑ですが、やっぱり本音は「できるだけ早くお願いします!」なんですね。

表紙枠の色も7色なら、次回は赤?でも最初のピンクを赤と思えば、残りは藍でしょうか。こちらも楽しみです。

◆あらすじ(Amazonより)
取引先である大東亜有機の要請でISOの取得に乗り出した喜美津化学。実質的な先導役を務める弘はその膨大な作業に追われているが、悩みの種は遅々として進まない製造部の文書作成。ところが当の本人たちは弘の目を盗み、時を同じくして行われる消火競技会の練習に熱中。しかもプライベートでは前原が母・佐知子に弘との関係を明かしたことで、弘と佐知子は口もきけない気まずい状況が続いていて…。次々持ち上がる難題に煮詰まった弘に前原が施した解決方法とは。

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